目の病気「加齢黄斑変性」の初期症状は?早期発見のための3分間チェック法



加齢黄斑変性」という病気を知っていますか?

この病気は50歳以上の方に多い目の疾患で、日本の場合、とくに男性が発症する可能性が高いとされています。

加齢が原因で発症する白内障はレンズにあたる水晶体が濁る病気ですが、加齢黄斑変性は網膜の中心部に位置する黄斑に変化が現れる病気です

人口に対する高齢化および喫煙習慣や脂質中心の食生活などの目に悪影響を及ぼす生活習慣により、罹患者が増加しています。

今回は、加齢黄斑変性を発症した場合、どんな初期症状があるのか、早期発見のためにどのようなチェック方法があるのか、また、眼科での診断・治療方法などの情報をお伝えします。

 

初期症状は

加齢黄斑変性を発症すると、どのような初期症状が出るのでしょうか。

 

見たいものがゆがむ

加齢黄斑変性を発症すると、ものを見るときに光刺激を感じ取る「網膜」の真ん中にあり視細胞が集中し、視機能において重要な役割を果たす「黄斑」に障害が生じます。そのため、ものがゆがんで見える「変視症」が初期症状として現れるケースがあります

網膜の周辺部には障害が起こらないので、周辺部はゆがみません。

 

見たいものがかすむ

見ようとしているものが見えづらく、視界の中心部分がグレーになってかすみむこともあります

疲れ目や老眼だと思い込んで、そのままにしてしまいかねない症状です。

加齢黄斑変性は疲れ目のように目薬で症状が軽減することはないことを覚えておきましょう。

 

早期発見できないとどうなる?

加齢黄斑変性の初期は、日常生活であまり珍しくない症状が出ることが多くあります。

そのため、気づかぬうちに進行してしまう可能性も高いです。

では、早期発見・早期治療ができないと、病状はどのように進行するのでしょうか。

 

視力が落ちる

初期症状を気にせずに放置していると、黄斑部の変化が進み少しずつ視力が落ちていきます。

50歳以上に多い病気なので、老眼と勘違いしてしまう方も多いでしょう。

 

コントラストがはっきりしなくなる

色の対比が不鮮明になり、視界全体がぼんやりと薄い色彩に見えてしまいます

よくある目に起こるトラブルとは違うので気づきやすいはずです。

 

見たいものが黒く見える

さらに症状が進行すると、見ようとしているものが黒く見える中心暗点を引き起こします

確実に気づく症状なので、早々に眼科医の診断を受けましょう。

 

加齢黄斑変性を発症するメカニズム

まず、目が見える仕組み、黄斑の役割について説明しておきましょう。

目で物をみるという機序はカメラに似ています。カメラはシャッターボタンが押されると、光がレンズを通り、それがフィルムに像として焼き付けられます。

目の場合、通過した光は水晶体(カメラでいうレンズ)で屈折して焦点を合わせます。そして、網膜(カメラでいうフィルム)で、光が信号に変換され、脳に伝わり「見える」のです。

黄斑は、網膜の中心にある直径1.5mm~2mm程度の部分で、その真ん中にある中心窩は、見ようとしているものからの光が当たる部位です。したがって、黄斑では優れた視力が得られるのですが、周辺部の視力は劣ります。

そのため、黄斑に障害が起こると、視力の著しい低下が起こります

網膜の下には網膜色素上皮という細胞が位置し、その下に血管に富んだ脈絡膜という組織があります。これらが正しく働くことで網膜の機能を保っているのです。

では、加齢黄斑変性がどのように発症するのか、そのメカニズムを説明していきましょう。

加齢黄斑変性には、萎縮型滲出型の2つの型があるので、それぞれで説明します。

 

萎縮型

萎縮型の場合、網膜色素上皮細胞とブルッフ膜との間に溜まった老廃物が原因で組織細胞が徐々に萎縮していき、視力が少しずつ低下していきます

現在の医療では萎縮型の治療方法はありませんが、萎縮部分が中心窩まで至らない限り、高度な視力障害にはなりません。

ただし、萎縮型から滲出型へ変化する可能性はあるので、定期的な通院が必要です。

 

滲出型(しんしゅつがた)

異常な血管(脈絡膜新生血管)が脈絡膜から網膜色素上皮の下の部分、もしくは、網膜と網膜色素上皮間に入り込み、網膜に支障をきたす病気です。

この新生血管は破れやすく、出血したり滲出(血液中の液体の成分が組織にもれること)したりすると、網膜に影響を及ぼします

日本人には、脈絡膜血管の肥大化した部分から漏れた滲出物や出血によって黄斑部分が害されるポリープ状脈絡膜血管症というタイプが多いです。

 

放っておくとほぼ失明する可能性もある

黄斑部の病気は、気をつけていれば気づきやすい見え方の変化が現れるため早期発見が可能です。

しかし、目は左右ふたつあるので、片目のみに症状が出た場合、どうしても見える方の目で見てしまいます。それで生活に特に支障がないと放置してしまい、発見が遅れてしまうのです

最悪の場合、ほぼ失明状態になってしまう危険性があります

糖尿病網膜症や緑内障が成人の失明原因として知られていますが、加齢黄斑変性は国内の失明原因の4位で、その患者数は70万人にのぼると推定されています。

働き盛りの男性がかかりやすい「中心性漿液性脈絡網膜症」を患ったことがある場合、加齢黄斑変性を罹患するリスクが高いといわれているので注意しましょう。

 

早期発見のために自分でできる3分間チェック法

加齢黄斑変性は症状が進むほど難しい治療が必要になります。

そのため、初期段階で治療効果を上げるべく、早期発見されるに越したことはありません。

症状に少しでも早く気づくための3分間でできるチェック方法を紹介します。

 

片方の目をふさいで本を読んで見る

片方の目に症状が出た場合、見える方の目で視力を補ってしまい、発見が遅れてしまうことがあります。

本や新聞を読んでいて、読もうとしている部分の中央あたりが見えづらかったりぼやけたりする。

そんなときは、片目を手で軽くふさいで、本や新聞を読んでみます。それを左右交互に試してみましょう。

※目を固く閉じないようにしましょう

いずれかの目で、読もうとしている部分の真ん中近くが暗くて読みづらい、文字が歪んで見えるといった症状があるなら、加齢黄斑変性を発症している可能性があります

 

片方の目をふさいで高い建物を見る

高層ビルやタワーを眺めていて、中央あたりが暗く見えたり、ゆがんでいるように感じたりしたら、前述の本のときのように、片目ずつ見てみましょう。

いずれかの目で中央あたりが暗かったり、ゆがんだりしていたら、発症を疑いましょう

片目ずつ本を読んでみる方法よりも、高い建物を眺めてみるチェック法の方がゆがみには気づきやすいです。

 

チェックシートを使う

紹介した2つの方法で加齢黄斑変性かもしれないと思ったら、アムスラー検査と呼ばれるチェック法も試しましょう。

まず、画像のような方眼紙の真ん中に黒い点がある図が書かれた紙を用意します。これがチェックシートになります。

このチェックシートから30㎝ほど離れ、片目で中央の黒丸を見てみましょう

※眼鏡やコンタクトはつけたままで大丈夫です

黒丸付近の線がゆがんで見える、黒丸周辺が暗くぼんやり見えるという場合は、加齢黄斑変性を罹患している可能性があります。早急に眼科で診断を受けましょう。

 

病院での診断方法は

自己チェックの結果、加齢黄斑変性の可能性がある場合、眼科で検査を受けましょう。

通常の視力検査も行いますが、ほかにも専門的な検査を受けることになります。

どのような検査があるのか見ていきましょう。

 

眼底検査

網膜の状態を詳しく調べる検査です。特に黄斑をチェックします。

網膜のむくみの有無、出血していないか、血液中の水分が漏れていないかを確認します

また、これらの原因となる脈絡膜新生血管の有無も調べます。ただし、新生血管の大きさや位置、活動性まではこの検査ではわかりません。

 

蛍光眼底検査

診断を確定し、治療方針を決定するために、蛍光色素を含む造影剤を使用して新生血管の状態を詳しく調べる造影検査が「蛍光眼底検査(蛍光眼底造影検査)」です

血液中を流れた造影剤が新生血管に侵入したときに撮影し、眼底検査では不明だった位置や大きさ、活動性を調べます

ただし、造影剤アレルギーがあったり、高血圧であったりと、造影剤の使用を避けるべき病気を持つ場合、この検査は受けられません。

 

光干渉断層計検査

眼底の断面を撮影して、網膜断層像から網膜や新生血管の状態などを多角的に確認する検査が「光干渉断層計検査」です

新生血管がある場合はその形や大きさ、中心窩と新生血管の位置関係、網膜がむくんでいるか否か、加齢黄斑変性の合併症である網膜剥離や網膜色素上皮剥離が起きていないかも確認できます。

短時間で検査でき、造影剤も使わないので、患者さんの負担も少なく済みます

 

滲出型(しんしゅつがた)の治療方法

検査の結果、脈絡膜新生血管がみつかり、先生から滲出型の加齢黄斑変性であると診断を受けた場合は、治療対象となります。

どのような治療方法があるのか確認してみましょう。

 

薬による治療

脈絡膜新生血管の発生には、VEGFとも呼ばれる血管内皮増殖因子(血管内皮細胞増殖因子)が関係しているといわれています。そのため、治療法として、血管内皮増殖因子を阻害するのが有効です。

目の中(硝子体腔)に6または4週ごとに2~3回VEGF薬注射を打ち、脈絡膜新生血管の退縮を促します

この薬剤を眼内に注射する方法は「抗血管新生療法」「抗VEGF剤硝子体注射治療」「抗VEGF薬治療」などと呼ばれています。後述の光線力学的療法(光線力学療法)と併せて治療に取り入れることもあります。

 

レーザー照射による治療

レーザー照射による治療には、光線力学的療法レーザー凝固があります

光線力学的療法では、光感受性物質「ビスダイン」を点滴した後、出力が非常に弱い専用レーザー光を病変に照射します。治療後48時間は目に強い光線が当たると、光感受性物質の影響で光過敏症を引き起こす可能性があるので、注意しましょう。

レーザー凝固は、脈絡膜新生血管が黄斑の中心から離れた箇所にある際に行われる治療法です。病変を出力の強いレーザーで固めて壊します。病変が黄斑の中心まで侵食している場合は、激しい視力低下を引き起こすため行いません。

また、網膜下出血が悪化して黄斑に及ぶと、血腫となり黄斑を傷めます。そのため血腫を移動させるために、早々に「硝子体ガス注入術」を受けるケースがあります。硝子体出血が発生している場合は、硝子体を切除して、硝子体出血を取り除く「硝子体手術」が必要となることもあるので、滲出型の場合、早い段階で治療を行うことが大切です

ほか、新たな加齢黄斑変性の治療法としてiPS細胞を利用する臨床研究も進められています。

 

加齢黄斑変性の予防対策にはルテインがおすすめ

加齢黄斑変性を発症する原因には、偏った食事も含まれます。予防的治療として、目の健康を保つ成分を取り入れることも有効です

抗酸化ビタミンであるビタミンC・Eや亜鉛とあわせておすすめの成分が「ルテイン」です。

ルテインは、レンズにあたる水晶体と網膜の中心である黄斑部に多く含まれ、目の重要な部分を活性酸素や紫外線などから守ってくれる抗酸化物質です。ルテインは、40歳を境に激減し、50歳では若いときの半分以下まで減ります。体内では生成できない成分のため、減った分は外から補う必要があります。

ルテインを多く含む食品は、ほうれん草、にんじん、ブロッコリーなどの緑黄色野菜です。予防のためには、1日につき6㎎~10㎎、効果を実感するには、20mg以上摂取する必要があるとされています。

毎日の食事で十分な量のルテインを摂取するのは難しいという方もいるでしょう。そんな方におすすめしたいのが、朝のルテインです。

からだの弱っているところを補う栄養であるプラセンタも配合されており、ルテインの持つパワーのバックアップも期待できます。ゼリータイプのサプリメントで、味はマンゴー風味。毎日飽きることなくおいしく続けられます。

人生100年時代です。日常生活の中で、食事のバランスに気をつけ、サプリメントなどもうまく活用して目を守りましょう。