視界に黒い丸があって消えない場合は、飛蚊症や加齢黄斑変性の可能性があります。
視界がクリアでないとQOL(生活の質)に大きな影響を与えるだけでなく、最悪の場合は社会的失明に陥ることもあります。目の健康のためには、日頃から目の疲労や老化を予防すること、目の病気の早期発見・早期治療に努めることが重要です。
この記事では飛蚊症や加齢黄斑変性の原因と治療法、予防法について詳しく解説します。
視界に黒い丸が見える原因
ある日から視界に黒い丸が現れるようになったという方は以下が原因として考えられます。
飛蚊症
目の前に何もないのに、黒い影や糸状のものが見える症状です。
眼球内の主に硝子体というゼリー状の物質が何らかの原因で濁り、それが網膜に投影されることで視界に現れます。目線を動かすと、黒い影も共に移動するため、蚊が飛んでいるように見えることから飛蚊症と呼ばれています。
飛蚊症の見え方は人によってさまざまで、黒い点や糸くずのような浮遊物が見えたり、曖昧な輪郭の円が現れたりします。
なお、暗い所で光の線が走ったように見えたりする「光視症」は、飛蚊症とは区別されますが、飛蚊症と併発するケースが多いです。
加齢黄斑変性症
加齢黄斑変性は、網膜の中心に位置する黄斑部が何らかの原因で障害を受け、視覚に異常をきたす病気です。
黄斑は、ものの形状や色を認識したり、文字を読んだりするときに重要な役割を担っています。加齢黄斑変性では、視覚の中心部に歪みや黒い影などの視野欠損を生じます。視界の真ん中にぼんやりとした黒い丸が現れ、対象が見づらくなるようなことがあれば要注意です。
無治療のままでは矯正視力でも0.1以下しかない「社会的失明」に至ることもあるため、早期発見・早期治療が重要です。
加齢黄斑変性は、年齢が上がるとともに罹患するリスクが高くなる、男性に多い目の病気です。
加齢黄斑変性を発症すると、ものの見え方が変わる、視力低下などの症状が現れ、放置すると最悪の場合、社会的失明状態になる可能性もありま[…]
飛蚊症の原因
飛蚊症の原因は、大きく分けて加齢にともなうものと、ほかの病気に起因するものがあります。
生理的なもの(加齢)
目のなかはゲル状の硝子体で満たされ、硝子体は目の奥にある網膜と接しています。
しかし、加齢とともに硝子体が液化し萎縮すると、硝子体がしぼんで網膜から剥がれ、硝子体混濁、後部硝子体剥離が起こります。するとその部分にあった糸状の線維などが影になって網膜に映り、黒い糸や点のように見えます。
最初はうっとうしく感じるかもしれませんが、次第に気にならなくなります。加齢による飛蚊症は生理的飛蚊症とも呼ばれます。
生まれつきの場合もある
生まれつきの飛蚊症というケースも存在します。
胎児の眼球が作られるとき、硝子体には血管が通っています。通常は眼球が完成すると、この血管は出産までの間に自然に消失します。
しかし、この血管や周辺の組織の一部が残存していると、生後も硝子体の濁りが残り、飛蚊症の症状が見られるケースがあります。
病気に起因
飛蚊症の症状が見られるとき、裏にほかの目の病気が隠れている可能性もあります。
網膜裂孔・網膜剥離
硝子体が網膜から剥がれるとき、均一に剥離するとは限りません。網膜に不均等に力がかかると、小さな穴が開くことがあります。これが「網膜裂孔(もうまくれっこう)」です。
網膜裂孔を放置していると網膜の裂け目から硝子体が入り込み、やがて「網膜剥離」を引き起こすケースがあります。網膜剥離に至ると著しい視力低下を招き、場合によっては視力回復が困難なこともあるので注意が必要です。
ちなみに、硝子体が黄斑からうまく剥がれず中心窩が裂けることを黄斑円孔といいます。
硝子体出血
網膜の血管がやぶれ、硝子体内に出血するものです。出血量が少ないと、飛蚊症と似たような症状が見られます。
出血の程度が軽い場合、出血による黒い影は周辺に吸収されて薄くなっていきます。そのため治ったと思ってしまうこともありますが、血管の破れはそのままなので再発する可能性があります。ほかの病気と鑑別するためにも、異常を感じたら眼科を受診しましょう。
糖尿病や高血圧の人は、血管に負荷がかかりやすく出血しやすいため、注意が必要です。
ぶどう膜炎
網膜の後ろにある「脈絡膜」、水晶体の周辺に位置する「虹彩」や「毛様体」などをまとめて「ぶどう膜」と呼びます。細菌感染や免疫低下などが原因で、このいずれかに炎症が生じるのがぶどう膜炎です。
ぶどう膜炎になると、視力低下や目の痛みのほかに、飛蚊症と同じような見え方をすることがあります。疲れやストレスを感じているときに発症しやすいです。
飛蚊症の検査方法・治療法
飛蚊症が疑われる場合は以下の検査を受け、結果によっては治療・手術をします。
眼底検査
飛蚊症には、生理的なもので経過観察でよい場合と、重大な病気の初期症状である場合があります。両者の鑑別のために、検眼鏡で網膜の状態を調べる眼底検査を実施します。
眼底検査の結果、後部硝子体剥離だけであれば、病気ではないので治療の必要はありません。しかし、網膜が引っ張られているような場合は、網膜裂孔や網膜剥離に移行したり、すでに進行していたりする可能性があるため、早急に治療しなければなりません。
網膜裂孔は治療、網膜剥離は手術が必要
剥離していない軽度の網膜裂孔であれば、レーザーを用いた光凝固法を行います。これは裂孔の周囲にレーザーを照射して糊付けするように固める治療で、孔を塞ぎ、網膜剥離へ移行するリスクを軽減します。
すでに網膜が剥離している場合は、手術が必要です。手術には、眼球の外側からアプローチする「強膜バックリング手術」と、眼球の内側から治療する「硝子体手術」の2種類があります。裂孔の位置や大きさ、進行度などに応じて、どちらの手術を行うかを決定します。強膜バックリング手術は軽症、硝子体手術は重症の場合の手術法です。
近年は技術の進歩により、網膜剥離を起こしても失明する可能性は低くなりました。しかし、治療が遅れると視力低下や視野欠損を招くので、早期発見・早期治療が重要です。
飛蚊症の予防法
飛蚊症は、生活習慣を是正すれば予防できます。飛蚊症の予防法を解説します。
目を疲れさせない
目の疲労が蓄積すると、硝子体が悪影響を受けて飛蚊症になることがあります。ぶどう膜炎を引き起こすケースもあるため、普段から目を疲れさせないようにしてください。
ブルーライトを長時間浴び続けることのないように、スマホやPCを使うときは、適度な休息を取ることを意識しましょう。
目の老化を抑制する
加齢とともに、生理的な要因で飛蚊症になる可能性が高くなります。飛蚊症の予防や進行抑制のためには、体と同じように、目もエイジングケアが必要です。
老化は体内の酸化によって引き起こされます。目の老化予防には抗酸化作用があるルテインを多く含む緑黄色野菜やサプリメントの摂取がおすすめです。
加齢黄斑変性の原因
加齢黄斑変性の原因には、以下の3つが挙げられます。
加齢
その名の通り、加齢は加齢黄斑変性の大きな原因のひとつです。
加齢黄斑変性は、欧米で多い病気でしたが、最近はライフスタイルの変化と共に、日本人の患者も増えています。
遺伝
加齢黄斑変性の発症に、遺伝が関与していることも明らかになっています。
家族に加齢黄斑変性の人がいる場合は、自分も発症リスクがあることを理解し、定期的に検査を受けるようにしましょう。
喫煙
喫煙は加齢黄斑変性のリスク因子のひとつです。
非喫煙者と比較すると、喫煙者は加齢黄斑変性を発症する確率が4~5倍高いという研究結果もあります。
加齢黄斑変性は2タイプ
加齢黄斑変性には、「萎縮型」と「滲出型」の2種類があります。
萎縮型
加齢にともない、網膜の組織が次第に萎縮し、黄斑の視細胞に障害を与えるタイプです。徐々に視力低下や中心部分の見にくさを感じるようになります。
有効な治療法が確立されていないため、生活習慣で予防に努めることが大切です。
滲出型
網膜の下に新生血管ができ、これがむくんだり出血したりして黄斑にダメージを与えるタイプです。
症状が急激に進行するのが特徴で、適切に治療しないと目に障害が残ってしまうこともあります。
加齢黄斑変性の検査方法・治療法
加齢黄斑変性の検査および治療法について解説します。
眼底検査
専用のカメラを用いて、網膜の萎縮や新生血管の有無、視神経などを観察する検査です。
眼科の検査の基本となるもので、眼底出血やむくみの有無などもわかります。
蛍光眼底撮影
蛍光色素が入った造影剤を用いて行う、確定診断のための検査です。
眼底に新生血管があれば、その部分に蛍光色素が確認できます。網膜の萎縮がある場合は、その部分がほかよりも明るく見えます。
光干渉断層計
眼底にレーザーを照射し、反射光を解析して網膜の断面図を描き出す方法です。
新生血管の形やサイズ、深さなどさまざまな情報が得られます。
滲出型の場合は治療が必要
滲出型加齢黄斑変性の場合は以下のような治療が必要です。
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眼科医の検査を受ける前に自己チェック!
歳を重ねるにつれ発症リスクが高まる目の病気のひとつが加齢黄斑変性です。
加齢黄斑変性は目の見え方に影響を及ぼし、QOL(生活の質)を低下させる原因となります。時には社会的失明を引き起こすこともあるので、進行を抑制するた[…]
予防法
加齢黄斑変性は、生活習慣の見直しで予防することが可能です。
禁煙
喫煙者の方は、禁煙が加齢黄斑変性の予防につながります。
今すぐ禁煙するのは難しいかもしれませんが、少しずつ本数を減らしたり、禁煙外来を利用したりして、目の健康につなげましょう。
紫外線を避ける
紫外線を浴び続けると、網膜がダメージを受けて加齢黄斑変性を引き起こす可能性があります。
日差しが強いときは、サングラスで目を保護しましょう。
ルテイン・ゼアキサンチンを摂る
カロテノイドの一種であるルテインおよびゼアキサンチンは、黄斑部の色素を増やし黄斑部を守る働きがあります。
ルテイン・ゼアキサンチンは緑黄色野菜に多く含まれているので、毎日の食事で積極的に摂取するとよいでしょう。
「ルテイン」はカロテノイドの一種で、緑黄色野菜に多く含まれている天然色素です。眼や皮膚などに存在し、特に加齢とともにリスクが高まる眼の病気の予防効果があるとして知られています。
ルテインは体内で合成できないため、1日の[…]
飛蚊症・加齢黄斑変性の予防にはルテインがおすすめ!
飛蚊症・加齢黄斑変性ともに予防効果が期待できるのがルテインです。
どちらも加齢により発症する確率が上がるものなので、早いうちからルテインの摂取を習慣化して、目の老化を防ぐことをおすすめします。
ルテインは緑黄色野菜に多く含まれますが、毎日十分な量の野菜を食べるのはなかなか大変です。そんなときは、サプリメントを使いましょう。
「朝のルテイン」は、美味しく摂取できるゼリー状のサプリです。
普段、目が疲れるくらいPCやスマホ見る人も、ブルーライトを吸収するルテインを摂って目の健康を守りましょう。